中国画報—刺繍枠の上の踊り子——姚建萍

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刺繍枠の上の踊り子——姚建萍

2018-06-20      本誌記者・王蕾=文    

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    蘇繍芸術家の姚建萍

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    姚建萍は刺繍作品を完成している 写真 人民画報社 王蕾

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    『周恩来刺繍像』

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    蘇繍『歳月如歌』

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    大型作品『シルクロード』シリーズの中で『シルクロード-満載で帰る』

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  蘇繍は中国の四大名刺繍のひとつで、江蘇省蘇州市の鎮湖が重要な発祥地である。姚建萍刺繍芸術館は蘇州高新区鎮湖街道にあるピンク色の壁と黒い屋根を持つ三階建ての建物で、1・2階には作品が陳列され、3階が仕事場になっており、現在40人余りが姚建萍と共に刺繍にいそしんでいる。陳列された作品は姚建萍が30年余りにわたって心血を注いで民間から収集してきた各時代の蘇繍作品と彼女自身の代表作である。姚建萍は国家クラスの無形文化遺産(蘇繍)の代表的伝承者であるため、芸術館に参観する人は多く、姚建萍が時に自身で展示作品の説明をしてくれる。

 

国の贈答品

 20151020日、ロンドンのバッキンガム宮殿でイギリス女王エリザベス2世が、訪問した中国の習近平国家主席と彭麗媛夫人から中国の蘇繍を受け取った。画面には女王とフィリップ殿下の長く連れ添った日々が描かれていた。この『歳月如歌』の蘇繍は長さ1.18メートルで、姚建萍と助手が3カ月余りをかけて完成させたものである。20166月の女王即位60周年のお祝いの際に贈られた姚建萍が刺繍した「英国女王」の作品も、バッキンガム宮殿に収蔵されている。

 20141113日、中国の習近平国家主席は人民大会堂でメキシコのペーニャ・ニエト大統領に姚建萍の創作した蘇繍『ペーニャとリエラ』を贈った。この作品は大統領夫妻の多くの写真を探し出し、2人の最も理想的な表情の瞬間を下敷きに創作されたものである。

 

先生について学ぶ

 姚建萍は鎮湖の新盛村に生まれ、7,8歳の頃から母や祖母に刺繍を習い、10数歳の頃には天賦の才をみせていた。1980年代の蘇州では1950年代に成立した刺繍研究所の中に多くの刺繍の名手が集められていたが、極めて厳格に秘密保持され、勝手に弟子をとって技を教えることは許されていなかった。友人の伝手をたどって、姚建萍は刺繍の名手徐志慧さんがすでに退職していることを知り、訪れて先生になってくれるように頼んだ。

 学び始めて4年後には、彼女はもう完全に徐志慧の教えを我が物としていた。徐志慧の指導のもとで、さまざまな運針法を覚え、伝統的な宮女、花、草、魚、虫などのテーマ表現をしっかりと身につけた。

 

決心

 姚建萍刺繍芸術館の展示ケースの中に、二面の刺繍が飾られており、これはイタリアのカメラマンジョルジョ・ローディが撮影した有名な肖像である『思いにふける周恩来』をもとにした刺繍作品である。1995年、姚建萍は8カ月をかけてこの『周恩来刺繍像』を完成させた。

 1996年、鎮湖で刺繍作品コンテストが開かれ、この『周恩来刺繍像』はあらゆる賞を総なめにした。2年後、この作品は初めての中国国際民間芸術博覧会で金賞をとり、姚建萍もまたユネスコと中国民間文芸家協会から「民間工芸美術家」の称号を得た。この後、彼女はさらに鄧小平の刺繍像である『偉人の風采』を一気に完成させた。

 1998年、現地政府は刺繍用品専門街建設計画を立てた。鎮湖はその名も知られた刺繍大市場となり、2002年には販売総額が3億元余りとなった。このとき、姚建萍は古い街にあった自宅に鎮湖刺繍研究所を建てた。

 

刺繍芸術

 姚建萍刺繍芸術館の三階にある仕事場で、記者は6人の姚建萍の学生が同時に一つの山水画作品を刺繍しているのを見た。

 姚建萍と学生たちは師弟関係にあるだけでなく、同僚でもある。仕事場の大部分の学生は姚建萍にすでに十数年学んでおり、あうんの呼吸となっている。一般的な大型作品は計画からデザイン、刺繍、表装にいたるまで、姚建萍がずっと創作過程全体を取り仕切っている。彼女は刺繍の原稿を理解・分析し、創作方法に対する研究を行い、どのような運針、地布、色彩を使うかを決め、その後図案を分解し、小さなサンプルをつくるが、これらは作品を刺繍し始める前にすべてをしっかりと把握し、自分自身を保つための準備だ。そして姚建萍が刺繍に参加する学生を選び、会議を開いて作品を分析し、仕事を配分する。作品の最初の針が入れられてから完成まで、姚建萍はすべて自らの手で行い、随時協調と修正を行い、作品風格が統一され、もっともよい効果に達することを保障する。

 姚建萍のグループは大型作品を作るうえでスムーズな協力という強みがある。大型作品『シルクロード』シリーズの中で『シルクロード-満載で帰る』は、姚建萍が3年をかけて2017年に刺繍を完成させたものである。この作品は何度も外交活動に協力し、中国美術館の永久コレクションとなっている。

 刺繍は一発でずばり急所に入れる必要がある芸術だ。姚建萍は「技術の上で一定の程度に達しており、針を極めて正確に入れる必要があり、機械では不可能です。芸術のうえで自分色を際立たせ、死んだものとしてはならず、精神を表現せねばならず、自分の理解によって変化を起こし、色彩や運針法などで表現する必要があって、こうしてはじめて高級な刺繍芸術となります」と語る。

刺繍を学ぶのは難しく、教える過程もまた難しい。

 しかし、姚建萍が最も困難に感じるのは、刺繍を学ぼうとする若い人が少ないことだ。

 記者が見た刺繍針は、あまりに細いので、指先にあることが分からないくらいだった。刺繍の過程は時間も精神も労力もかかり、ネット時代に育った子供たちにとって刺繍はあまりに異質な世界である。

 刺繍を趣味とするのはまだよいとして、事業とするならば、周期が長く、かかる労力も極めて大きい。姚建萍によれば、三年で一つの山を越えるという。三年がんばって学び続けられれば、より高いところに到達できる。さらには、かつては先生について習っていたものが、現在では給料をもらっても続けたくないという人が多く、継承ということが彼女の最大の悩みとなっている。

 そのため、姚建萍は清華大学芸術学院に在籍している娘を連れ戻し、娘に新しい世代の教育と宣伝に努めてほしいと願っている。「私は蘇繍がとても素晴らしく尊重されるものだということを知ってほしいと思います。もしこれを継ぐ人がいず、絶えてしまったらあまりにも惜しいです」。

 

時代に感謝

中国美術館で、ある観衆が姚建萍の刺繍作品を見た後、彼女に深いおじぎをした。第105回パリ秋の芸術サロン展のとき、100年余りの歴史をもつこの芸術展が芸術家を紹介しないという今までの慣例を破り、姚建萍を開幕式で紹介した。スペインのある女性芸術家は姚建萍の作品を見た後、感動のあまり彼女は「天使の手」を持っていると言った。 

蘇繍には主に平針と乱針という二つの大きな刺繍法があるが、姚建萍は伝統刺繍の方法を応用し、しだいに各運針法を融合した自分自身の運針法を編み出していった。29歳のときの『周恩来刺繍像』にはじまり、大型蘇繍『江山如此多嬌』さらに国家の贈り物として使用された作品や『シルクロード』などの作品まで、彼女は着実に自分の夢をかなえて来た。

 今日の姚建萍はあらゆる彼女の時間を蘇繍に捧げ、学生を指導し、創作グループを組織し、国内外で展覧会を開催し、さらに作品創作を続けている。中国文学芸術界連合会の全国委員会委員として、彼女は代表会議に出席し、各界の文化名人とよく会っている。「彼らはみな情熱をもった芸術家であり、彼らの経歴や成果は私に刺激を与えてくれます。芸術の道はひたすらに没頭し、続けてゆくだけなのです」。

(本文における未署名の写真はすべて姚建萍が提供したもの)

 

 

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刺繍枠の上の踊り子——姚建萍

2018-06-20      本誌記者・王蕾=文      

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    蘇繍芸術家の姚建萍

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    姚建萍は刺繍作品を完成している 写真 人民画報社 王蕾

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    『周恩来刺繍像』

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    蘇繍『歳月如歌』

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    大型作品『シルクロード』シリーズの中で『シルクロード-満載で帰る』

  蘇繍は中国の四大名刺繍のひとつで、江蘇省蘇州市の鎮湖が重要な発祥地である。姚建萍刺繍芸術館は蘇州高新区鎮湖街道にあるピンク色の壁と黒い屋根を持つ三階建ての建物で、1・2階には作品が陳列され、3階が仕事場になっており、現在40人余りが姚建萍と共に刺繍にいそしんでいる。陳列された作品は姚建萍が30年余りにわたって心血を注いで民間から収集してきた各時代の蘇繍作品と彼女自身の代表作である。姚建萍は国家クラスの無形文化遺産(蘇繍)の代表的伝承者であるため、芸術館に参観する人は多く、姚建萍が時に自身で展示作品の説明をしてくれる。

 

国の贈答品

 20151020日、ロンドンのバッキンガム宮殿でイギリス女王エリザベス2世が、訪問した中国の習近平国家主席と彭麗媛夫人から中国の蘇繍を受け取った。画面には女王とフィリップ殿下の長く連れ添った日々が描かれていた。この『歳月如歌』の蘇繍は長さ1.18メートルで、姚建萍と助手が3カ月余りをかけて完成させたものである。20166月の女王即位60周年のお祝いの際に贈られた姚建萍が刺繍した「英国女王」の作品も、バッキンガム宮殿に収蔵されている。

 20141113日、中国の習近平国家主席は人民大会堂でメキシコのペーニャ・ニエト大統領に姚建萍の創作した蘇繍『ペーニャとリエラ』を贈った。この作品は大統領夫妻の多くの写真を探し出し、2人の最も理想的な表情の瞬間を下敷きに創作されたものである。

 

先生について学ぶ

 姚建萍は鎮湖の新盛村に生まれ、7,8歳の頃から母や祖母に刺繍を習い、10数歳の頃には天賦の才をみせていた。1980年代の蘇州では1950年代に成立した刺繍研究所の中に多くの刺繍の名手が集められていたが、極めて厳格に秘密保持され、勝手に弟子をとって技を教えることは許されていなかった。友人の伝手をたどって、姚建萍は刺繍の名手徐志慧さんがすでに退職していることを知り、訪れて先生になってくれるように頼んだ。

 学び始めて4年後には、彼女はもう完全に徐志慧の教えを我が物としていた。徐志慧の指導のもとで、さまざまな運針法を覚え、伝統的な宮女、花、草、魚、虫などのテーマ表現をしっかりと身につけた。

 

決心

 姚建萍刺繍芸術館の展示ケースの中に、二面の刺繍が飾られており、これはイタリアのカメラマンジョルジョ・ローディが撮影した有名な肖像である『思いにふける周恩来』をもとにした刺繍作品である。1995年、姚建萍は8カ月をかけてこの『周恩来刺繍像』を完成させた。

 1996年、鎮湖で刺繍作品コンテストが開かれ、この『周恩来刺繍像』はあらゆる賞を総なめにした。2年後、この作品は初めての中国国際民間芸術博覧会で金賞をとり、姚建萍もまたユネスコと中国民間文芸家協会から「民間工芸美術家」の称号を得た。この後、彼女はさらに鄧小平の刺繍像である『偉人の風采』を一気に完成させた。

 1998年、現地政府は刺繍用品専門街建設計画を立てた。鎮湖はその名も知られた刺繍大市場となり、2002年には販売総額が3億元余りとなった。このとき、姚建萍は古い街にあった自宅に鎮湖刺繍研究所を建てた。

 

刺繍芸術

 姚建萍刺繍芸術館の三階にある仕事場で、記者は6人の姚建萍の学生が同時に一つの山水画作品を刺繍しているのを見た。

 姚建萍と学生たちは師弟関係にあるだけでなく、同僚でもある。仕事場の大部分の学生は姚建萍にすでに十数年学んでおり、あうんの呼吸となっている。一般的な大型作品は計画からデザイン、刺繍、表装にいたるまで、姚建萍がずっと創作過程全体を取り仕切っている。彼女は刺繍の原稿を理解・分析し、創作方法に対する研究を行い、どのような運針、地布、色彩を使うかを決め、その後図案を分解し、小さなサンプルをつくるが、これらは作品を刺繍し始める前にすべてをしっかりと把握し、自分自身を保つための準備だ。そして姚建萍が刺繍に参加する学生を選び、会議を開いて作品を分析し、仕事を配分する。作品の最初の針が入れられてから完成まで、姚建萍はすべて自らの手で行い、随時協調と修正を行い、作品風格が統一され、もっともよい効果に達することを保障する。

 姚建萍のグループは大型作品を作るうえでスムーズな協力という強みがある。大型作品『シルクロード』シリーズの中で『シルクロード-満載で帰る』は、姚建萍が3年をかけて2017年に刺繍を完成させたものである。この作品は何度も外交活動に協力し、中国美術館の永久コレクションとなっている。

 刺繍は一発でずばり急所に入れる必要がある芸術だ。姚建萍は「技術の上で一定の程度に達しており、針を極めて正確に入れる必要があり、機械では不可能です。芸術のうえで自分色を際立たせ、死んだものとしてはならず、精神を表現せねばならず、自分の理解によって変化を起こし、色彩や運針法などで表現する必要があって、こうしてはじめて高級な刺繍芸術となります」と語る。

刺繍を学ぶのは難しく、教える過程もまた難しい。

 しかし、姚建萍が最も困難に感じるのは、刺繍を学ぼうとする若い人が少ないことだ。

 記者が見た刺繍針は、あまりに細いので、指先にあることが分からないくらいだった。刺繍の過程は時間も精神も労力もかかり、ネット時代に育った子供たちにとって刺繍はあまりに異質な世界である。

 刺繍を趣味とするのはまだよいとして、事業とするならば、周期が長く、かかる労力も極めて大きい。姚建萍によれば、三年で一つの山を越えるという。三年がんばって学び続けられれば、より高いところに到達できる。さらには、かつては先生について習っていたものが、現在では給料をもらっても続けたくないという人が多く、継承ということが彼女の最大の悩みとなっている。

 そのため、姚建萍は清華大学芸術学院に在籍している娘を連れ戻し、娘に新しい世代の教育と宣伝に努めてほしいと願っている。「私は蘇繍がとても素晴らしく尊重されるものだということを知ってほしいと思います。もしこれを継ぐ人がいず、絶えてしまったらあまりにも惜しいです」。

 

時代に感謝

中国美術館で、ある観衆が姚建萍の刺繍作品を見た後、彼女に深いおじぎをした。第105回パリ秋の芸術サロン展のとき、100年余りの歴史をもつこの芸術展が芸術家を紹介しないという今までの慣例を破り、姚建萍を開幕式で紹介した。スペインのある女性芸術家は姚建萍の作品を見た後、感動のあまり彼女は「天使の手」を持っていると言った。 

蘇繍には主に平針と乱針という二つの大きな刺繍法があるが、姚建萍は伝統刺繍の方法を応用し、しだいに各運針法を融合した自分自身の運針法を編み出していった。29歳のときの『周恩来刺繍像』にはじまり、大型蘇繍『江山如此多嬌』さらに国家の贈り物として使用された作品や『シルクロード』などの作品まで、彼女は着実に自分の夢をかなえて来た。

 今日の姚建萍はあらゆる彼女の時間を蘇繍に捧げ、学生を指導し、創作グループを組織し、国内外で展覧会を開催し、さらに作品創作を続けている。中国文学芸術界連合会の全国委員会委員として、彼女は代表会議に出席し、各界の文化名人とよく会っている。「彼らはみな情熱をもった芸術家であり、彼らの経歴や成果は私に刺激を与えてくれます。芸術の道はひたすらに没頭し、続けてゆくだけなのです」。

(本文における未署名の写真はすべて姚建萍が提供したもの)

 

 


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