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芽生えるバーチャルリアリティー動画

2017-12-07      胡周萌=文

 

 

 今年のヴェネチア映画祭は、世界のバーチャルリアリティー関連のクリエイターにカンフルを打つこととなった。この最も歴史が長い映画祭で初めてVR(バーチャルリアリティー)部門が設置され、世界の著名な国際映画祭の中でも率先して新興メディアをとりあげ、『自遊』『捨夢老人』などの中国のVR動画など22作品が入選し、世界中の注目を浴びた。金獅子賞獲得の情報もまたこれらの中国VR動画製作者が国内でより注目を浴びることに拍車をかけた。過去2年間、VRブームは熱くなったり冷めたりしたが、彼らはいまだこのVR動画という青い海の中で浮き沈みしている。



 

技術と芸術の衝突

 「あのクジラが水面から跳ね上がるシーンは本当に真にせまっていたね!」楼彦昕の両親は『自遊』を見たのち、驚嘆した。『自遊』は楼彦昕がサンドマン工作室を創立した後初めて手掛けた作品で、この工作室の11名のメンバーはほとんどが1990年代生まれで、ゲームや芝居などの出身であり、実景撮影の経験はなく、そのために当初からすべてCGVR動画を製作することを選んだ。

 楼彦昕にとって、VR体験は言葉を使って人に伝えるのは難しく、自分で実際に体験してみて初めてわかるものだ。「私と同僚は一度体験してすぐに、これをやってみようと思いました」。

 VR技術を構築する3Dメディアは平面メディアをはるかに超える潜在力があり、クリエイターにまったく新しい物語空間を与えてくれる。楼彦昕は、「伝統的な映画のストーリーは固定的なもので、一つのシーンは一つの位置からしかとりませんが、VRは舞台劇のように、45つの役柄を同時に変化させ、さらにあなたの視野を舞台の下から舞台の上へ上げることもできます」と語る。

VRの没入型体験は感覚刺激のアップグレードをもたらしたが、全方位的な情報は観客の注意力を削ぎやすくしてしまう。VR動画において、映画の伝統的なカットと編集の方法は生かせるところがなく、新たな視覚言語ルールが模索中である。

『自遊』では長回しのような手法を使用し、画面を主役とともにゆっくりと動かしてゆき、観衆を物語のプロットに導いてゆく。『捨夢老人』は三幕劇の構造をとり、一幕が終わった後、画面が暗くなってまた次の幕が始まる。

インタラクティブはVRの没入感の便利なツールであるが、物語の連続を保証するため、VR動画作品の中にはあまり広く応用されていない。楼彦昕によれば、『自遊』では最初、インタラクティブを取り入れており、主役がクジラに会ったとき、一人称の視野に切り替えた。もともと観衆に手をのばしてクジラに触ってもらおうとしたからだが、試写で、観客が「どうしていいか分からない」という状況に次々と陥り、インタラクティブは理想的な効果を生まなかった。そのため、『自遊』の最終バージョンの中からインタラクティブは捨て去られることとなった。



平塔工作室


楼彦昕は、「どうやってインタラクティブで観衆の体験をもたらすか、これは台本のうちからきちんと考える必要があります。誘導は特に重要で、コンピューターゲームの誘導のようにする必要があります」と語る。サンドマン工作室の新作品『太極』は終始インタラクティブ体験を一貫したもので、観衆の視線を通して動作が完成し、周囲環境の変化を生み出している。

VR動画の作品は数分のものから十数分のものまでいろいろで、制作ツールとハード設備の代替わりのスピードもその時間を制限する重要な要素となっている。サンドマン工作室はほとんど2カ月ごとに製作ソフトを更新し、ソフト更新後は作業効率があきらかにアップする。

「例えば以前はある機能を実現させるために2週間かかったものが、更新後はたった2日でできる可能性あります」と楼彦昕は語る。

現在、VRは表示効果が超高解像度に及ばず、かつめまいをもたらす可能性がある。これらのハード設備不足はVR動画の長さを制限する。『捨夢老人』の製作者で平塔工作室の共同創始者の雷蒙からすると、10分前後がもっとも時間として適当であり、このためにVR動画は小型で美しい物語を表現するのに適している。

『捨夢老人』は夢を伝える温かな物語である。この物語は米粒監督のインスピレーションによるもので、彼は以前道端でゴミ漁りをする老人を見て、人々が簡単に捨て去った物から、もともとは大切にされていた夢を連想したのだ。動画の中でゴミ漁りの老人が捨てられたものをきちんと手入れして、さらに人に送り、それらも物が載せていた夢を伝えている。平塔工作室が今世に問おうとしている新作品『烈山氏』は、神農が百草を試したという神話物語を述べている。雷蒙は「このVR動画の表現性はさらに強いものとなり、主役の神農氏が毒草を食べた後、幻想の中で怪獣と戦う場面はとても強い視覚的衝撃を持っています」と語る。



サンドマン工作室

 

商業的な宝を探す

 9月中旬、250万元ほどを費やしてつくられた『捨夢老人』が国内各大手サイトのVR動画コーナーにアップされ、27時間での再生数が100万回を超えた。このバージョンは最初にパノラマ動画が描画され、携帯で360度視聴ができた。リアルタイム描画のVR映像は観客の行くところや視線に応じて画面が提示され、視聴体験が顕著に高まったが、現在市場のVR再生が可能なコンピューターにVRヘッドマウントディスプレイを増設しなければならず、その価格は万元にもなり、大規模に普通の消費者の家庭に入り込むのは難しい。

 従来の映画の成熟した劇場システムにくらべ、VR映画を見る専門の場所はいまだとても少ない。国内には千にものぼるVR体験館があるが、それはおもにVRゲームのサービスが行われている。今年6月にようやく北京で初のVR映画館ができた。しかし、国美や万達などの大企業はすでにVR映画館の設置に着手し始めている。

 2016年以降、中国のVR市場は爆発的成長とあっという間の冷え込みを経験してきた。多くのVRのコンテンツ制作会社は倒産の危機に瀕している。資本ブームが高まる中でも投資はほとんどがハード設備製造業者に流れ、より困難に見舞われているコンテンツ企業には流れてこない。同業他社に比べると、平塔工作室のスタートは好調なものだったといえ、『大聖帰来』の副監督に米粒が参加しても、蒙は数十の投資者を探してようやくわずか600万元のエンジェルラウンドを得たところである。




楼彦昕


 しかし、平塔工作室は今では多元化・商業化の道を切り開いている。『捨夢老人』がヴェネチア映画祭で上映された後、版権販売・広告などの派生業務で収入を得ることができたのだ。平塔工作室は一般公募というかたちで20余りの企業と提携プロモーションを行い、その業種はお酒、ナッツ、雨傘までに及んだ。彼らはさらに化学工業出版社と提携して子ども用の絵本をつくり、第一刷の6000部はほとんどが予約で埋まった。『捨夢老人』のインターネット版で公開されたバージョンには13のブランド広告が埋め込まれている。蒙は、商業化の試みや努力を通して、同業者に自信を与えたいと語る。

 映画祭の組織を得意とする楼彦昕も、自分なりの方法でVRコンテンツ業界を盛り立てて行こうと思っている。昨年から、彼はすでに3度の「砂の器」VR動画展を開催し、同業者が集まり最新動向を交換し、さらには人々によりVRを知ってもらうチャンスを与えようとしている。彼はさらに来年6月に千人を超える規模での大型展覧会を行い、世界の優れたVR作品を上映し、フォーラムや創業投資会を開催しようとしている。楼彦昕は、「国内のVR産業はまだあまり成熟しておらず、VR映画製作側、投資側、発表プラットフォームに一つの交流の舞台を提供したい」と語っている。

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