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下梅古村を訪ねて
文 肖坤氷  写真 林帝浣

 下梅は山間にある小さな村だが、いくつもの立派な肩書きをもつ。世界自然遺産と文化遺産の一部であり、中国歴史文化の名村である。多くの肩書きの中でも私が最も引き付けられたのは、「万里の古茶ロードの起点」である。

 下梅村は福建省武夷山から東に6キロ行ったところにある。9月の下旬、夏の名残りの強い日差しが照りつけるなか、下梅古村を訪れた。武夷山駅に降りたつと、一台のバンに乗り込み、目的地である下梅に向った。市区から下梅村に向う公共バスがないため、この村に行くためには20元を払ってバンをチャーターするか、乗客が5人集まるのを待つしかない。5人が集まって運転手は一人あたま4元を徴収し、ようやく車が走り出した。下梅村の村民もこのようにして車に乗って街にやってくる。

 われわれは暑い日差しをあびて、上下に揺さぶられながら、とうとう村の入り口に到着した。さらさらという水音が涼しさを感じさせてくれる。村の入り口にある石柱には、かつての「食糧生産を要とせよ」というスローガンがわずかに残っていて、まるでもう誰も見る人のいない芝居のセットのように、そこに立ち尽くしていた。その寂莫とした空気のなかに、村の入り口にある川を跨いで祖師橋が架かっている。これは下梅村が繁栄していたときに、各同業組合がおのおのの業界の開祖を祀るためにお金を出し合って共同で建てたものである。かつての祖師橋は文革のときに壊され、現在は先の跳ね上がった屋根をもつ二階建ての四角い建物が建っている。耳をそばたてると、当時ののみやつちを振るう音、鉄を打つ音がかすかに聞こえてくるようで、しかしそれらは、いかだ漕ぎたちの歌声とともに時間という渦のなかに飲み込まれ、祖師橋は相変わらずそこに立ちつくしているけれども、かつての腕利き職人たちは姿を消してしまっている。

 川の水はゆったりと流れ行き、下梅村を東西ふたつの部分に隔てている。村の石板街に沿って歩くと、30軒あまりの清代に建てられた民居がある。白く塗られた壁に黒い屋根瓦、装飾のある門や梁、窓にほどこされた透かし彫り。ここは江南の水郷地帯かと錯覚させられるような光景である。ふと目をあげると、窓の透かし彫りの奥に美しい顔が半分のぞいているのが見えた。川ぞいの道では、茶をえり分けている女の影が川面に映っていて、光あふれる印象派の絵画のようだった。夕日は西に沈みゆき、連れ立って川に洗濯にきていた女性の笑い声がしだいに遠ざかってゆく……。

 川ぞいの道には、背もたれのある長椅子と屋根が連なっている。その椅子には「美人もたれ」という美しい名前がつけられていて、ここは村民が休み、茶を飲み、世間話をする場所である。暑い日の午後なので今は人影はなく、川で遊ぶアヒルも石橋の落とす日陰に身を寄せていた。3匹の犬だけが川のそばに寝転んでいて、観光客の足音にも頭もあげず、薄目を開けてこちらを見やっただけで、びくりともしなかった。

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