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高まるマジックブーム
文/殷 星 写真/段 崴

 

 ホグワーツ魔法魔術学校と魔法使いのハリー・ポッターによって、イギリスの女性作家J.K.ローリングは一躍億万長者となった。そして、中国中央テレビ局(CCTV)の「春節晩会(日本の紅白歌合戦にあたる年越し娯楽番組)」によって、マジシャンの劉謙は一夜にして有名人となった。劉謙はたくさんの国際的な賞を獲得している台湾の名高いマジシャンだ。しかし、2009年の春節、彼は大陸の人々にも広く知られるようになった。

 劉謙の急速な人気上昇は、CCTVの役目を無視できない。「春節晩会」は、中国人にとって、感謝祭に欠かせないシチメンチョウのようなものである。この旧暦の大晦日に放送される娯楽番組は、視聴者が3億人に上るという。しかしいまや中国の娯楽手段はテレビだけではない。伝統的な祝祭日に対する関心の薄まりや、「春節晩会」に対するマンネリ感によって、26年目の「春節晩会」は視聴率が低迷した。「春節晩会」はかつてCCTVの独占な看板番組だったが、今は地方テレビ局も地方なりの「春節晩会」を創りだしている。激しい競争にさらされ、CCTVの「春節晩会」の新しい出し物への渇望は、劉謙に絶好のチャンスをもたらした。

 劉謙が「春節晩会」のステージで脚光を浴びる前、マジシャンで中国の観衆に親しまれているのは、デビッド・カッパーフィールドしかいなかった。デビッドへのあこがれから自分はマジックの道に入ったと劉謙も言っている。劉謙が春節晩会で披露した近景マジックは、マジック関係者以外にはあまりなじみがない。「大陸ではマジックだけの公演がほとんどなく、あっても幕間のちょっとした出し物でしかありませんでした。マジシャンの公演チャンスが少ないため、観客が見るチャンスも少なく、マジックに対する人々の認識は、燕尾服を着てシルクハットをかぶって、帽子からハトを取り出すマジック止まりです。しかし、世界のマジックの発展は遥かにこれを超えています。劉謙が一夜にして有名となったのは、中国の観客のマジックに対する『無知』に感謝すべきです。彼のマジックは皆にマジックの基本を知らしめました」とマジシャンの李彦培は語る。取材中記者は、マジックを専門に教える学校を探したが、大陸にはマジックを専門とする公式な学校がまだないことを知った。アメリカには、専門的なマジック学校が数十校ある。記者は、中国国家図書館のインターネットで723冊のマジック関係の本を見つけた。この数はデビッド個人の蔵書にも及ばない。これが中国大陸の人々のマジックに関する「無知」をよく示している。

 劉謙は「春節晩会」のステージに立つ初めてのマジシャンではないが、マジックで大陸を風靡した最初のマジシャンだった。これは彼個人の魅力のお蔭だろう。整った顔、ユーモアたっぷりの言葉遣い、魅惑的な目つき、上品なしぐさ、そして、言うまでもなくその円熟した技が観客を惹き付けた。彼はガラスのコップやコイン、タマゴ、指輪などの身の回りにあるものを小道具に使っている。これらの日常用品は、彼の手によって幻のような奇跡に変わる。

 ハリー・ポッターの魔術は、世界のファンたちを魅了したが、あくまで手が届かないものだ。しかし、劉謙のマジックは普通の人々に超能力を与え、個性を求める人々に適当な表現法を提供するものである。「春節晩会」の後、マジックは普通の人々の間に広まった。多くの人は、好奇心を抱いてマジックの公演を見て楽しむだけで、そのタネを追求しない。マジックの魅力はタネが分からないことにあると思っているからだ。マジックを学んだ人には、まれにそれを職業にする人がいるが、多くの人々は好奇心、あるいはガールフレンドや上司を喜ばせるために、一つ二つの技を学ぶだけである。マジックのタネを専門的にあばく人もいる。「春節晩会」の後、インターネットには、劉謙のマジックのタネをあばくさまざまな写真とビデオが数多く現れ、クリック率も高かった。タネ明かしの写真を貼り付けたりビデオをアップロードしたりした人たちは、皆を楽しませようとしただけだったが、大きな論議を引きおこした。タネを明かそうとするのは人間の自然な反応で、一人一人が真相を知る権利を持っていると支持者は言う。しかし、神秘がマジックの命だから、いったんタネがあばかれるとマジックの観賞価値もなくなると、反対者は言う。インターネット利用者のタネあかしは、一部は正しいが、完全に解き明かしているものはまだないと劉謙は語る。そして、人々にマジック自身に注目してマジックの面白さを楽しもうと呼びかけている。

実はマジック自身は芸術の一種で、映画と同じように現実のものではない。映画監督は作品に個人的な理念を注ぎ込むが、マジシャンが知恵を絞って作り出した出し物の目的は、かなり簡単で、ただ観客を喜ばせるためである。マジックのタネを必死にあばこうとする人は、娯楽精神に欠けると言えよう。マジックをそのような角度から観る彼らは、楽しむというよりか、騙されまいとしているかのようである。大陸のマジックの発展が遅れているのは、観客がまだその楽しみ方に慣れていないのが一因だろう。商業映画が登場したばかりの頃、その手ぬかりをみつけることが、一時インターネット上で流行した。今の観客は、撮影技法や役者の演技、シナリオのよしあしや映画のテーマに注目する。十数年間の商業的な運営を経て、中国の映画界は日増しに成長した。それにしたがって、中国の映画ファンも成長した。マジック産業の発展も、同様な効果をもたらすに違いない。

 

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