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風転カフェ
ラサの北京東路にある小路の入り口に、風転カフェの看板がかかっている。小路を200メートルほどすすむと、タイからやってきたアピンがカフェの入り口で自転車をもてあそんでいた。上品な感じのアガンがかたわらで微笑みながら見守っている。
香港からやってきたアガンは、かつて大の旅行好きで、30歳前にすでに30カ国・地区に自分の足跡を残していた。2001年、アガンは初めてチベットにやってきて、どうしようもないほど惚れ込み、3カ月ここに滞在した。「ここは暖かいけれど、すこし見知らぬ家のようです。子供がはじめて世界に出てきたときのような感じがします。長々とした礼拝を見ると、これはどうしてかと聞きたくなりますし、バター茶を飲みツァンパを食べてもその理由を聞きたくなります。つまり、チベットすべてに対して好奇心いっぱいだったのです」。アガンはこのようにチベットに対する気持ちを語ってくれた。かつて訪れた他の都市と比べると、ラサのようにアガンをさまざまな問いかけでいっぱいにさせたところはなかった。2006年、アガンは彼のタイの友達アピンとともに、自転車でタイからラサに向けて出発した。その半年の間に、とても苦しい思いをしながらも、彼らはとうとう心中の理想の国に到着した。計画期間をへて、2007年4月に、漢・チベット・タイの様式をすべてそなえたカフェをラサに開業した。このカフェは面積は39平方メートルしかないが、ラサに初めてついた観光客や自転車旅行者の小さいけれども暖かな家となった。
アガンとアピンにはさらに神秘的な「11年の約束」がある。彼らはラサで11年コーヒーを売り、「風転カフェ」をずっと2020年まで維持してゆこうと考えている。それでは11年後には何をするのかと問いかけると、アガンは笑って答えた。「11年は長いから、2020年になったらまた考えるよ」。友達はかつて冗談半分にアガンに言ったことがある。あんたは、前世チベット人だったにちがいない。少し内向的なアガンはこのような言い方を完全に受け入れることはできなかったが、反対もできなかった。11年というもっともすばらしい時期をラサに捧げる決定をした人間からすると、このような解釈もロマンチックで悪くはないからだ。
ピンツオカンサンの縁




ラサの青年路には間口は小さいものの別世界の観があるユースホステル、ピンツオカンサンがあり、その名は「何でもある新しい家」を意味する。このホステルの経営者のひとり高遠は、当時このチベット族の名前を選んだ過程を振り返ると、とても幸せそうな表情となった。彼によると、このホステルの家主はピンカンという姓の家族で、これはよくあるチベット族の名前であるそうだ。いかにも質朴でまじめそうなので、彼とホステルの共同経営者はほとんど何も考えず「ピンツオカンサン」という極めて普通で、チベット風の名前を選んだ。
2004年、北京の会社で働いていた高遠は、突然何人かの友人たちとチベット旅行に行くことを思いたった。そのときはたいして長い旅行でもなかったが、それは高遠の生活を徹底的に変えてしまった。北京に帰ってからも、チベットのすべてが高遠にとって、夢に見るほど拭い去れないものとなってしまったのだ。そのため、彼のなかに大胆な計画が芽生え始めた。ラサで働こう。とうとう、高遠がふたたびラサにやってきたとき、彼はそこが何年かのうちに彼の家となるだろうことを知っていた。彼は高原のうえで本当の生活を始めた。2005年、高遠は友達が開いた小さな店で、現在の妻と知り合った。一人は北京人、一人は福建人で、ラサで出会い、恋に落ち、最後に結ばれた。道理で高遠は何度もラサは彼にとってラッキーな土地だと言うわけだ。
2006年、何人かの北京の友人がラサに旅行に来て、高遠は主人として彼らのラサ旅行に付き添った。北京に戻ってほどなく、何人かの北京の友人たちは、ラサに対する渇望を抑えがたくなり、みんなでいっしょにラサにひとつの家をつくろうでないか、と決めた。この家は、彼らのラサにおける落ち着き場所であるだけでなく、すべての旅行者に門戸を開くもので、すなわち現在のピンツオカンサン・ユースホステルである。現在開業4年目となったピンツオカンサン・ユースホステルは、すでに無数の旅行者のラサの「家」となっている。ここの従業員はすべて純朴なチベット族のアジャ(おねえさん)で、伝言板の上にはいつもさまざまな伝言の紙がはられ、宿舎の天井には四季いつでも暖かな太陽がそそぎ、屋上ではしばしばパーティが行われる。つまり、ピンツオカンサンはいつでもにぎやかで、高遠とラサの縁は彼とラサの会合の日から始まり、ずっと絶えず続いているのである。
ラサ、この魅力にみちた中国の高原の神聖都市には、トゥトゥ、ゴウゴウ、アガン、高遠ら、かつて旅行者だった若者が無数にひきつけられている。この活力にみち特色をもつバー、カフェ、ホステル、小売店は、人々のラサに対する深い愛情であり、それは色あせることがないのである。