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東北地方で生まれ育った王福春は、故郷の土地に深い愛着を持っている。30年あまり前から、王福春は手にカメラを持ち、その土地に住んでいる人々の生活を記録している。中国の急速な発展にしたがって、多くの生活様式は変わり、消え失せたものもある。王福春の写真は貴重な記録だと言える。しかし、粘り強く自分たちの生活様式を今日まで保ち続けてきた人もいる。
大興安嶺北坂にある根河市には、狩猟によって生活しているエヴェンキ族がおり、人口は200人に満たない。彼らは約800匹のトナカイを飼育し、森林の中で原始的な生活を送っている。彼らは中国で最後のトナカイを飼う人々である。
長年、原始的な遊牧・狩猟によって暮らしてきたエヴェンキ族は、ずっと貧しい生活を送っている。森林面積の減少にしたがって動物は少なくなり、このような状況が続いてゆけば、この民族の生存を脅かす問題となるだろう。地元政府はエヴェンキ族の生活レベル向上のために、山の麓に定住地や学校、博物館、衛生所などの補助施設を造って提供し、山から下りて定住生活を送ることを奨励した。
2003年8月10日、山奥に住んでいたエヴェンキ族は彼らのトナカイと一緒に政府から派遣された車に乗り、山を下りた。王福春はその様子を記録するためにそれに同行したが、道中、胸に一台のニコンのカメラをかけ、やはり自分の家の引越しの記録写真を撮っているエヴェンキ族の大学生ニュウリカに会った。このエヴェンキ族の若者は、今回の引越しについて、これによって文明的な生活ができると考えており、「私も民族のために何かをしたい、彼らの将来を変えたいと思っています」と、興奮気味に語った。
興奮気味のニュウリカと対照的に、年を取ったエヴェンキ族は山を離れたくないと感じていた。青い民族服装を着た最年長の70歳ぐらいのマリア・ソは、100匹のトナカイをもち、部落でも最も地位の高い人物である。彼女は最も頑固な態度をとり、断固として山を下りようとはしなかった。彼女の父が近くの山に埋葬されているためかもしれないと、彼女の息子は語る。
そして、マリア・ソ1人をのこして、みんなは山を離れた。
3年が経った。王福春は再びこの地を訪れた。すると彼はまず、山を離れて定住しているはずのエヴェンキ族の多くが、もはやそこにはいないことを発見した。人に聞くと、彼らは山に戻っていったという。
王福春は山にマリア・ソを訪ねた。彼女は山の下の病院で白内障の手術を受け、視力が回復し、メガネをしていなかった。引越しについて聞くと、マリア・ソの態度は相変わらずで、「都市には高いビルや自動車、そして私たちのために建てられた新しい家しかなくて、トナカイは鉄の檻の中で飼育しなくてはなりません。トナカイが飲む水道水は臭く、トナカイは牛、馬、羊と違い、草を食べずに苔やキノコを食べるのです。それって籠の中にはないでしょう? トナカイは檻のなかで飼育できる動物ではありません。檻のなかではうまく飼育できないのです」
山を下ったエヴェンキ族の一部は、マリア・ソのように考えて再び山に戻っていった。政府は彼らの選択を尊重し、それを止めることはなかった。しかし、以前に比べ、これらのエヴェンキ族の生活は変わった。ガスを使ってご飯を作り、連絡には携帯電話を利用している。しかし、「森林こそが私たちの本当の家なのです」と、彼らは語る。