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蒸気機関車の物語
文と写真 子胥

 

 

「嘉陽の小さな汽車」を待っているおばあちゃん

「嘉陽の小さな汽車」は芭溝の旧鉱山区と岷江のほとりにある石渓鎮との間を毎日一往復しており、鉱区にすむ職員や住民ら数万にものぼる人々の唯一の交通手段である

「嘉陽の小さな汽車」の車中の一こま

西南・芭石鉄道

成都から出発して、楽山を経て国道213号線を犍為へと進み、州の先にある船着場から船にのり岷江を通って石渓鎮に着く。そこには全長19.84キロの芭石鉄道の始発駅が村の山の上にある。我々が駅に着いたとき、午後2時の列車がプラットフォームに止まっていた。四川嘉陽グループの権利に属するため、地元の人はこの列車を「嘉陽の小さな汽車」とよんでいる。汽車の大きさはびっくりするほど小さく、真っ黒な汽車の先頭部は蒸気機関車のそれを縮小したものである。細部の設計は簡単なもので、機関車の先頭部も炭水車も同じように時代を経ていて、見たところとても古いもののようであった。機関車の運転手は狭い車窓から半身を乗り出して乗客に挨拶をしている。乗客は視線をあげるまでもなく挨拶を返すことができ

嘉陽炭鉱は1938年に創業された、四川でもっとも早い時期の中国・イギリスの合資企業である。芭石鉄道は19588月に建設が初められた。この鉄道のゲージはたっ76センチで、普通の列車の半分しかなく、そのため「寸軌」汽車と言われている。雲南の昆明からベトナムのハノイまでの鉄道の100センチゲージ、いわゆる「米軌」列車に比べてもさらに小さいため、遊園地のおもちゃの列車のようである。現在にいたるまで、この「小さな汽車」は沿線の村民が外界と通じるための重要な交通手段である。長年の使用で車体にはさびが点々と浮き出ているが、この「産業革命の生きた化石」はすでに国内外の観光客がそれを見にわざわざやって来る観光スポットとなってい

小さな汽車は、芭溝の旧鉱山区と岷江のほとりにある石渓鎮との間を毎日一往復しており、鉱区にすむ職員や住民など数万にものぼる人々が山を出るための唯一の交通手段である。これは現在、世界でも常時運行しているもっともゲージの狭い蒸気機関車である。私たちがそこについた日はちょうど現地の人たちが市に行く日にあたっており、当然指定席切符は売り切れていて、道中を立ちんぼでゆくしかなかった。手元にある地図によると全部9つの駅があり、われわれの旅の終点は最後から二番目の駅、芭溝鎮である。

列車は丘陵や渓谷の間を抜けて走り、新鮮な空気が車内に流れ込んできた。いつだったか、金髪碧眼の二人の外国人がカメラの三脚をかまえて花の中にたち、車内の人に両手を振っていた。車内の人たちはこのような光景を見慣れているのか、これに応えて手を振りながら、笑い声をあげた。快楽とはかくも簡単なものである。

鉄道ファンの興奮と満足

「私はその光景を頭に浮かべていました。私が描くのは、汽車が出発するときの光景で、煙突がもくもくと煙をはき、周囲は何もはっきりと見えない。これはとても魅力的な光景で、夢の世界のようでした」。これはフランスの印象派の画家モネが1877年に「サン・ラザール駅」の油絵を描いた理由である。当然、彼は記憶で描いたのではなく、現場にいって、陽光と蒸気機関車の吐き出す蒸気による効果を見事とらえて書いた。駅を描くために、最もよい光線の時を選んで、さらに大画家として鉄道総監に会うために、一張羅の礼服を着て出かけた。彼の来意を知った総監はさっそく駅の整備を命じて、プラットフォームに停車中の汽車が、必要があるときにはいつでも煙を吐き出すように手はずをととのえてくれた

蒸気機関車は画面に描かれコレクションされる以外にも、ひとつの生き生きとした命であった。山のなかにつくられた高架鉄道橋を蒸気機関車がごうごうという音をたてて通り過ぎる光景を思い浮かべてみるとよいだろう。橋の下から仰ぎ見ると汽車は青空に浮かぶ白雲に溶け込んでいて、大空へ向って天地を往復する列車のように見えるだろう。山の上から眺めると、周囲の山並みが見渡せ、村、小さな駅、鉄道、道路、橋、そして遠くからこちらに向ってやってくる蒸気機関車は、人に希望とあこがれを与えてくれる。

蒸気機関車は中国では50年あまりの輝かしい歴史をもつ。そのいかなるものをも砕き散らして走るそのイメージは、一定の年齢の中国人の記憶の中に、さまざまな姿で存在している。現在、内モンゴルの集通線であろうと四川芭石鉄道であろうと、毎日世界各地から旅行者やカメラマンたちが蒸気機関車を見に、撮りに、録音しに、集まってくる。蒸気機関車の部品やプレート、鉄道関係者が用いたノートに至るまで、高価格で取引される対象となっている。

汽笛は遠ざかってゆき、人々はかつての時代を懐かしむ。内蒙古・四川などの地にわずかに残る蒸気機関車をたずねて走り回るのは、まさに快楽といえよう。

 

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