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リー族の伝統的な薬の使用方式は外用・消毒・内服のほかにも、独特な調剤方式がある。芳香のある薬草を布袋で包み、赤い絹糸でぶら下げて常に持ち歩く。その芳香が人を興奮させるため、元気が出て、医療作用およぼす。リー族の避妊薬もこの方法で用いられ、不思議な効果をもつという。
リー族の薬のもう一つのおもしろい現象は、女性が果たす独特な役割である。リー族社会は母系社会の遺風を濃厚に残しており、リー族の女性は男性よりも植物や薬物を食物として利用することについて詳しい。リー族には専門の医師や薬師はおらず、医学がわかるものはすべて薬にも通じていた。医学に通じるリー族の多くは生産労働に従事しながら、村民の病気を診た。彼らは身につけた医薬知識によって、さまざまな、あるいは単一の病気治療を行った。医薬知識を伝承する方法もさまざまで、もっとも一般的なものは、年長の「薬母」が後継者を連れて山に行って、薬草の名称と識別、使い方や効果、生長の習性などを教える。後継者がそれを身につけると、「薬母」はニワトリを殺し、処方伝授儀式を行い、リー族が「交刀」と呼ぶ交替が行われる。その後、後継者は単独で薬草の採集をするようになる、というものである。
このように、リー族は文字をもたないので、口頭によって医薬知識の伝授が行われる。しかし、その貴重なリー族の医薬文化という遺産は、現在失われつつある。実地調査によると、リー族の医者の収入はほかの職種と大体同じであるのにもかかわらず、リスクが大きいため、若者はリー族の伝統的な医薬文化の継承に興味をもたなくなり、リー族の医者の高齢化がすすんでいるという。現在すでに70歳を過ぎている人もおり、後継者不足に悩まされている。
さらに大きな危機として、海南島の開発にしたがって、地元民の生活水準が高まりつつあるが、薬草は直接的に経済利益をもたらす資源なので、貴重な薬草が過度に採集され、生態環境の破壊を引き起こすことがあげられる。リー族の有名な薬草「小叶地不容」(「金不換」とも呼ばれる)は国家二級保護植物であり、その根は腫瘍治療の良薬で、ここ数年、過度に採集された結果、野生数が激減し、絶滅の危機に瀕している。『海南植物誌』の著者、海南師範大学植物学教授の鐘義は海南の植物の保護に心を砕いており、海南の中部にあるリー族の集中居住地区の生態環境の保護を行い、貴重な薬草資源の持続可能な利用を目指すことを訴えている。鐘教授にとって、「海南の独特な地理環境と豊富な種の資源は人々の生存と発展の資本」なのである。